2019年1月26日土曜日

*1月のお話* 水色の月


寒い日。
夕暮れ時の空があまりにきれいな色。
この世のものではないような穏やかな白い月の顔を
部屋から一人でみていた。
この世界は、どんなに孤独か。
その切なさとうれしさを教えてくれるような。

雪が降った日。
朝起きたら深い白に覆われていた。
真っ白な上を、キツネ色の猫が
ときどき振り返りながら歩いていった。
寒いとも、冷たいとも、不安だとも言わずに
ただ今日を、振り返りながら歩いてゆく猫。

この二つの冬の日が
どうしても描きたくなり、何度も何度も、色を重ねた。
始めたばかりの水彩は思い通りにならず
私には難しすぎるのかもと
途中で諦めたくなる気持ちをおさえて。
つたなくても「真っ白な紙のままのほうがよかった」
ということはないと思って。

たどり着いた風景は
私が想像していたものとは少しちがう気がするけど
こんな新しい風景にも出会えるのか、とも思った。

代わりに、ある人は
この絵の前に立って「懐かしい」と言った。
「この絵の風景の中にいたことがあります」と。

もっと上手く、速く、思い通りに
たどりつける人はたくさんいる。
でもなぜか、まだみたことのない
「私」と「誰か」の風景に出会いたくて
苦しいのに、また絵を描く。

- - -
原画は販売済みです
- - -






0 件のコメント:

コメントを投稿